秤屋会長のひと言

市場原理と振子式はかり

ヨーロッパを150年ぶりと云う熱波が襲った8月11日、オーストリアのザルツブルグに滞在いたしておりました。高原都市である筈のこの地でも、気温は34℃ということで(通常は20℃以下)、テレビニュースでは最大限のトップニュースとしてとりあげておりました。日本人にとって、特に名古屋在住の住民にとって、34℃という気温はさほどの暑さとは感じず、湿度が低いため、木陰に入ればむしろさわやかな位のものでした。ところで表題ですが、暑い中、街を歩き回っておりましたところ、あちこちの街路の一角に振子式の体重計が置かれておりました。



しかも、なかにはここ1~2ヶ月に据えつけられたとおぼしき新品のものもあり、しばし、その前で釘付けになりました。日本ではすでに十数年前に市場から姿を消してしまって、誰もかえりみることのない型式のはかりが現在も生き残っている!職人技術が存在しない限り、ありえない機種です。市場原理的に云えば、安くて多機能で、しかも精度も高い、大量生産に適した電子はかりが、この種の伝統的技能を伝承したはかりを駆逐してしまった訳です。その気になって、この地を見ると、市場で売買されている青果物などを計量している秤は、ほとんどが振子式のはかりです。アメリカを中心とした市場原理を至上のものと信奉してきた我々日本人にとって、この十数年、過当競争による収益低下、大量生産体制で圧倒的コスト安を誇る中国の台頭により、深刻な経済停滞を招いてしまっている現状から、市場原理による国家企業運営が果たして正しいものなのかどうか、あらためて考え直す必要があると痛感して帰国いたしました。100年程前に開発された秤を使い続けているヨーロッパと今の日本、一体どちらが幸せなのでしょうか?小泉総理殿


35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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