秤屋会長のひと言

太宰治と超大国の没落3


破滅型作家として、戦後の一時期、一世を風靡した人気作家太宰治と超大国の没落とどう結びつくのかというところであります。



余談になりますが、大作家というブランドには自殺の影がいつも付きまとうものらしい。外国ではヘミングウエイ、国内では三島由紀夫、芥川龍之介、ノーベル賞作家の川端康成等、日本の文壇の革命的な旗手として、太宰治も若くして命を絶ちましたが、永遠の生命力を持つ作家群の一人といえましょう。



確か高校生の3年ごろだったか、太宰治の『斜陽』という作品を読みました。



後に『斜陽族』という流行語となってジャーナリズムをにぎわしたものです。これは作家の自伝的な小説ですが、大戦のあと、日本の階級制度が消滅し、寄生的な階級であった、貴族階級は、当然のことながら制度的な支持装置が消滅したわけですから、生活の基盤を失ってしまった訳です。小説の主人公は、華族の家に生まれた御令嬢。その人の目を通して描かれる没落華族の顛末なのですが、内容的にはそのものをお読みいただくとして、その主人公が、小説の最後のくだりで、つぶやく言葉に私は愕然とした覚えがあります。このときの感動は今もありありとして記憶の底に残っております。



「銀行があるのも、警察があるのも、株式会社があるのも、農業組合があり、政府があるのも、みんな女が安心して子供を生み育てるためにあるのです・・・」当時、高校生だった私には驚きでした。無頼派作家というものはこういう発想をするもなのか・・そこには高邁な思想も、深遠な哲学もない生身の人間の思わず発するつぶやきでしかないものが作品のテーマとなっている!正直私は納得がいきませんでした。



そこで今回のテーマですが、人類史上最強を誇る帝国が脆くも崩れて行った事実の裏づけが、なんと、乳幼児の死亡率なのです。『女が安心して子を生み育てられない』状況は最強の軍隊や武器を持っていようがお構いなく帝国を終わらせてしまうのです。読後60年ようやく納得が行きました。太宰治万歳です。



ちなみに、日本の医療制度もいまやピンチの状態にあり、特に産婦人科、小児科の崩壊が日夜マスコミをにぎわせておりますが日本もどうやら崩壊への道を歩んでいるのではないかと気がかりです。新政権が誕生しそうですが、ぜひ、新首相には、太宰治の作品群を読んでもらいたいものです。




35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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