ある不思議な体験 2 (2011年12月20日)
2時間近いドライブの間、ラジオは単調な口調の繰り返しで何かを伝えている。恐る恐る同行者に聞いてみたら、予備役への出頭命令が各軍管区別に流されており自分の属する管区が呼び出されたら、直ちに出頭しなければならないという。その呼び出しの放送中だという。同行者は“早川さん誠に申し訳ないトンデモナイ日に来てもらってしまった”という。何も同行者が仕掛けた戦争でもないのに、至極真面目に挨拶されて、返す言葉ありませんでした。ようやくソウルについたとき、街はそれほど大混乱というさまではなく、たとえば、大勢の人が車に家財を積んで逃げ惑うというような大混乱はなく、相変わらずの繁盛ぶりでした。しかしホテルについてみると、若い社員の運転する出迎えの車は放り出し、あたふたと引返していきました。われわれは、ロビーに荷を持ち込みやれやれとあたりを見回すと、何かが変である。ロビーやカウンターにはほとんどが女性従業員ばかり。たまに男性がいても相当な年配の従業員ばかり?あれれこれはどういうことかと思いながら、チェックインを済ませ、部屋に入りましたが、落ち着きません。ロビーの女性たちの対応もどこかうつろ。そこでもっと情勢を探ろうということで、部屋を出てロビーに戻りました。ソウルでも有数のホテルですがやはり人影が薄い。地下の商店街でも覗こうかと地階におりました。その一角に大きな広場がありました。そこに沢山の人が集まっておりました。何事かと思いそばへ寄ってみると、すべて若い男性ばかりが50~60人ぐらい、床に腰を下ろし、食い入るようにテレビ画面を見ております。ホテルの若い従業員たちです。しかもその顔色はとてもじゃないが生気が全くない。しかしぎらぎらとした内心の緊張感がみなぎっている。テレビに目を移してみると、今度は緊張した音声とともに、テロップで確かに地区別の呼び出しをかけている様子が見てとれます。一区切りがつくと座っていた男性の中から数人が立ちあがって、こわばった表情のまま、広場からそそくさに立ち去ってきます。その繰り返しが続きます。
事ここに至ってやはりただことではない事態になりつつあるということが実感できました。予備役招集は事実だったのです。 つづく