秤屋会長のひと言

想定外事件の2件(その2)

想定外事件の2件(その2)


さて、福島第1原発事故の方ですが、このところ、韓国でフランス製新幹線の車両が韓国製になってから故障が続発しているという報道が新聞に出ておりました。4年ほど前に、ソウルからプサンまでのって見ましたが、少々おごって日本でいうグリーン車を選びました。しかし乗ってみた限りではなんとなく頼りなく、華奢で、こんな軽い車体で高速を走るのは怖いという実感でした。フランス製らしくインテリアデザインはプラスチックやガラスを多用したサロン風の粋なつくりではありましたが高速鉄道という存在感からするとどうも今一つという感じがいたしました。それに引き替え、日本製は重厚感があり身を任せて、安心感があります。身びいきと言われればそれまでですがやはりものづくりでは文化の差というだけではないものの考え方の相違が強く感じられました。同じ東洋民族の韓国が、入札で安かったどうかはしりませんが、現在故障が続発しているということは韓国と日本のモノづくりの歴史の差というものが存在するものと考えられます。日本の場合は明治以来の歴史を持っております。その間に培った技術力というものの結晶が新幹線という産物を生むに至ったものであります。おそらく韓国の場合は戦後以来の歴史があるにとどまるのではないでしょうか?歴史的な基礎技術の蓄積がない状況での模倣は簡単でありません。その結果が表れているものと思われます。


なぜ韓国を取り上げたかというと、日本にも同じような現象が起きております。福島原発であります。これは核忌避症の日本が初めてアメリカより導入した、原子炉発電装置ですが、これこそ当時の日本は全く原子力に関する製造技術力はなく、100%アメリカ依存の設備でした。しかもその設備は、初期のころのあまり成熟していないフエーズのものでした。おそらく100%アメリカで設計製作されたこの原子炉は、日本の特殊事情はほとんど考慮されていないと思われます。世界有数の地震国。逃れようのない狭い国土にひしめく1億2千万の民。繰り返し定期的にやってくる自然災害や大津波みたいなものはほとんど念頭になかったと思われます。つまりアメリカ側のほうでいわせれば、想定外のものと言わざるを得ません。ただ日本側も日本の事情は承知しているはずですが、誰かが根拠もなく大丈夫と言い出せばあえて反対できる経験と技術力はない。そして安易について言われるままに導入する。そして破綻すると打つ手も乏しく右往左往するだけとなります。導入以来40年たつ間に日本の特殊事情というものを原子炉の保全上に反映させるチャンスはいくらでもあったはず。またこのままでは危ないぞという懸念も提案もあったと聞きます。それをせず、ずるずる成り行き任せで、想定外はないでしょう。技術力というものは本当に一朝一夕に出来上がるものではないという痛い痛い実績を日本は余儀なく積み重ねることになっております。この稿のテーマである2つの想定外という事件ということになります。それが、わずかな時間軸でやってきたということです。ただ後先が逆であったら日本はどうなっていたかと思うと、やはりなでしこジャパンに最敬礼ということになりますか。野村元監督の言う『不思議な勝ちはあるが不思議な負けはない』を地でいった2件の想定外事件。失敗に学ぶということも成長のために必要として、日本はうれしい想定外と、この失敗の方の想定外をしっかり吟味して、甘受しなければなりません。以上




35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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