秤屋会長のひと言

世界最大級の体重計

またしても守隨はやりました。

数年前には、100トンをはかる吊はかりで、
最大級を誇りましたが、今度は体重計です。
最大能力はなんと5トンです。
載せ台の面積は4m×4.5m。
いったい何の体重をはかるのでしょうか?

はい答えは、シャチです。
海で泳いでいるシャチではありません。
またお城の天守閣ににらみを利かせているシャチでもありません。
なんとっ!名古屋港水族館で来館者にダイナミックに愛嬌をふりまいているあのシャチです。

名古屋城の天守閣に金箔に彩られた名古屋を象徴するシャチの実物です。名古屋は城で持つといわれておりましたが、その昔、天守に担ぎ上げられたシャチは泥棒に狙われるぐらい分厚い黄金の鱗をまとっていました。泥棒が凧に乗って取りに行ったという伝説があるぐらいございます。その豪華さで、城はシャチで持っていたといえましょう。というわけであるのかどうか、名古屋のお城のひざ元で、シャチが4頭も飼われているのです。雌2頭に雄1頭、それに赤ちゃんシャチが1頭ということで、名古屋が誇る、これまたあまり世界にも例のないコレクションになっております。

昨年の今頃でしょうか、ある商社を通じ、シャチの体重をはかれる秤が作れるだろうかという相談が来ました。最初はそんな物作ったことがない。社内で相談しても、まあできないだろうなということになりました。そしていろいろ条件をお聞きしたところますます困難ということになりました。多くの同業者が断っているらしい。

とにかくシャチは非常に神経質で警戒心が強い。はかりをそれと意識させたら乗ってくれない。またやわらかい皮膚を傷つけて感染症を引き起こしたら大変なことになる。はかりをおくべき場所はプールのヘリで、海水がすぐそばに迫っているところで、シャチが乗れば海水がどっと一緒に降りかかってくる。普通の鉄製では1か月ともたない、錆びだらけ。目方が大きいということで、構造上の必要から、はかり台の自高が高くなれば、シャチは怖がって乗ってくれないなど、誰が考えてもリスクが山盛り。長いこと仕事をしていると、何年に一度かこういう難問が降りかかってきます。来たなというところです。わが社ではこういう仕事は、ミニプロジェクトXと名付けております。とにかく昨年秋から、何度も社内で開発会議を開き、一つ一つ、難問をクリアしていきました。年末に至りようやく、80%ぐらいの確率で可能性が出てきました。納期的にはタイムリミットが来ていました。

ところが、通常のはかりであれば、荷物は上から下へ、垂直に置かれます。ずれは生じません。しかしシャチは横から飛び乗ってきます。この時の横揺れ衝撃で、センサーと台部がずれるという問題については解決法に絶対がなく、ずれてしまったら目方はでたらめになります。人間でいうなら関節脱臼状態になるということですね。これが最大の難関でした。しかしこれも数回協議しているうちに、何とか良いアイデアが出てまいりました。詳細は企業秘密ですが、ようやく前途が見えてきました。

更にはかりを分解して持ち運びができるような構造するリクエストにも応える事になり、人間が一人で持ち運び可能な重量まで、部材を分解可能な構造するというご要望です。4m四方の5トン計量器です。しかも素人の我々でも組み立てられる様に、分かりやすい構造と追加の注文が付きました。これには参りました。しかし、ここで断れば終わりです。ここでめげてはわが社の名折れ、革新と創造が売り物の会社です。分かりやすい構造のご要望にお応えできました。結果的には、ストップウオッチで組み立て時間をはかってみたら3人で、約30分で組立られました。また誰でもできるようにと、ビデオで分解組み立てを採録いたしました。

本当に疲れました。これでシャチたちの健康管理は万全。間違っても我々のようにメタボにはならないかどうかはわかりません。この壮大なプロジェクトは、約10か月の期間を必要といたしました。もし名古屋港水族館に立ち寄られた折には、シャチ親子と是非とも我らの労作?をご披見くださいますようお願い申し上げます。


35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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