秤屋会長のひと言

スリーハンドレッド5(最終回)

前回スリーハンドレッド4の続き


今回は一気に第2次ぺロポネスス戦役からサラミス海戦役、内紛を経てギリシャはどうなったか。そして本題の安倍政権と自衛権で何がうっすらと見えてきているかを伝えたいと思います。



スリーハンドレッドの戦闘の詳細は省きますが、地理的な優位性を生かしギリシャ軍は1か月以上持ちこたえます。しかしついに全滅の日がやってきます。ペルシャ軍はギリシャ軍の背路へ通じる道を見つけ、最も恐れていた腹背に敵が迫り完全に包囲されてしまった訳です。生き残ったギリシャボランティア軍はこの包囲網を突破して故郷の都市に戻りましたが、スパルタの軍団は踏みとどまり退却を支援します。しかしそれもつかの間、取り囲まれたペルシャに、あっという間に殲滅されてしまいます。無残なものです。しかし、この尊い犠牲にギリシャ全土は猛然と立ち上がります。第1次ペルシャ戦役はこの後、両軍はアテネ近郊のマラトンの平野に会いまみえ戦闘を交えますが、アテネの名将の指揮もあって、準備を整えたギリシャ軍は、ペルシャ軍を圧倒して勝利します。戦勝を告げる兵士が42.2キロメートルの距離を走り抜けアテネに辿りつき、元老院に戦勝を報告し息絶えます。この歴史上の誇らしい史実をギリシャではマラソン競技として残しております。現在でもオリンピック競技の目玉となっていますね。

「旅人よ、わが故郷にいかば、告げてよ、スパルタの兵士は祖国のため、戦い死して此処に眠ると。」スパルタの山崖に彫りこんだ墓碑銘の逸話を少年の頃、何かで読み、深く感動したことを覚えております。


これにはスリーハンドレッドIIという続きがあり、ペルシャ側も陸戦に懲りて海戦で挑む第2次ぺロポネスス戦役が始まります。今年の6月頃、もちろん私も見に行きました。話せば長くなりますので省略いたしますが、舞台はスパルタから海軍国のアテネが主役になります。これも世界の戦史上画期的な勝利として記憶されている有名なサラミス海戦役です。映画というものは「凄いな。」と思わされるシーンの連続で海戦を特写しております。今はCGを駆使して「不可能がない」位の表現力です。すっかり私もギリシャの兵士になったみたいで迫力がありました。結局ギリシャ軍は、朝霧を利用してペルシャの艦船の隊列を崩し、地勢的に不利な海峡に誘い込み、何倍もの敵の大型船の自由を奪い、ギリシャの小型ガレー船の敏捷な行動により体当たり攻撃、各個撃破に成功します。結局戦争を終わってみれば脆弱であったペルシャ海軍の艦船はばらばらに砕かれた船ばかりとなり、海に浮かぶペルシャ船なしということになります。この二つの戦役に敗れたペルシャは言うまでもなく歴史の墓場に葬られます。


そして勝ったギリシャにも問題が残ります。この戦役に懲りて、個別ばらばらであった都市国家をまとめるギリシャ全土の統一政権を打ち立てる必要が生じ、それがだんだんと内戦へ陥ってゆくのであります。まずスパルタとアテネの対立が生じます。つまりこの戦役でどちらが主役であったか、陸戦のスパルタか、海戦のアテネかということになります。どちらも盟主となることを主張します。簡単にまとめるとこの話、なんと戦争にまで発展してしまいます。最初は軍事国家であるスパルタが勝ち、全ギリシャの盟主となりますが、またしばらくしてアテネが仕掛けてスパルタを破ります。この間ギリシャの群小都市国家は右往左往し、混乱のなか国力を大幅に低下させてしまいます。そして結局はぺロポネスス半島の北に展開するマケドニア王フイリップ(アレクサンダー大王の父)に簡単に征服されてしまいます。この後はローマ帝国、トルコなどの大国の属国として生きることになり、ここにギリシャの栄光は終わります。紀元前5世紀に世界に君臨しようとしていたギリシャも、これより以降はヨーロッパの一小国と成り果て現在に至っております。


そして本題の12月14日信任となった安倍政権。この政権が掲げる政策の主要なテーマは「個別的自衛権」か「集団的自衛権」かどちらを取るかの判断を国民に問うという所にあった。安倍政権が信任されれば集団的自衛権を選ぶことになるのでしょう。ここで個別的自衛権といっても、現状はアメリカというバックがあるという前提での自衛権で「同盟国アメリカが攻撃されても関与しないが日本が攻撃された時アメリカは助ける」という、かなり虫の良い条件になっております。

終戦後の疲弊し息も絶え絶えの日本ならばともかく、ノーベル賞受賞者数も世界の5指に入る国力を備えているにも関わらず、他国の庇護のもと暮らす国が果たして独立国家と言えるのか?民族の誇りというものはもたないのか?そういう気概を持たずして国家が保てるのかという反省はないのかということである。

北はロシア、直近の隣国は反日政策に凝り固まっている。その北は食うものも食わずに核開発に専念している。そして最大の難物、中国。最近の状況は、史上最強を誇るアメリカでさえ遠慮がちに見える。この中にあって日本の能天気な生き様は、陰で諸国の嘲笑を買っている?最近では小笠原諸島の領海内で中国漁船がほしいままに漁場をあらし、サンゴを略奪していった。日本の主権など何もないという現状。200隻も乗り込んできて検挙1隻とは!それも大した罪にも処せず解放。なめられますねこれでは。ペルシャという超大国に対して、ギリシャが無敵の防衛戦を展開できた理由は、ギリシャ全土のアクロポリスが結束していたからであります。集団的自衛権というのはこれではないでしょうか?ギリシャが、アテネとスパルタと覇権争いをして、内輪もめして結束が無くなれば、その後の歴史が示しているように、滅亡の道を送るよりないということになります。


安倍内閣信任で、すんなりとは集団的自衛権の確立とはいけないでしょうが、前途がそのような方向に見えてきたということではないでしょうか?個別的自衛権と言っているものはいったい何なのだということであります。できもしない単独自国防衛をできると言い聞かせて、ひたすらアメリカ頼り。反米の立場の共産党が個別的自衛権を声高に叫び、いざとなればアメリカさんに頼れというのですか?これで衆院21議席を物にしているのは世界の奇跡でしょう。とにかく他国が日本のために血を流すのは構わないが、日本人が流すことはできないとする個別的自衛権がこれからも通用するのか?

隣国中国が思いも掛けず巨大化した。これも重要な現実です。もし日本に中国が手を出してきた時、アメリカが助けてくれるだろうか。アメリカも「同盟国です」と言っているだけで十分効果を上げていた日本が、今や中国と剣呑な関係になりかけている事態を頭痛の種ととらえているのでは?ならば「アメリカが助けざるを得ない。」様にするにはどうしたらよいのか?

日本人も共に血を流すしかない事になります。それが双務契約となる、集団的自衛権ということになります。


だここに厄介な核の問題が絡みます。核はある意味で現在までは国家間の大がかりな対戦を引き起こさせない抑止力として働いていますが、一面、持つ国、持たない国に分かれて持つ国の発言権は絶対に無視できない。実際、核を持たない国が、持つ国に核で脅迫された場合はおそらく抵抗できない。言いなりになるよりない。そこで抵抗した場合、核を打ち込むと脅迫された場合に、アメリカが果たして助けてくれるかどうかわからない。報復でアメリカが核の攻撃を受ける懸念があっても、あえて自国民を犠牲にしてまで、日本を擁護してくれるであろうか?それは無理となると、日本独自に核を持たざるを得ないという事実に突き当たります。アメリカも内心そう思っている節があるようです。しかし、原発1基稼働させるのにこれだけ大騒ぎをしている日本が攻撃型核を持つなど夢の夢?皮肉なことに核爆弾の原料である、プルトニュームの貯蔵量は世界最大といわれる日本であるのに…!

現実に戻って「核の問題は廃絶に向かって運動していく」として棚上げし、通常兵器による戦争の防止策を考えて見ましょう。現在中国は南シナ海において、小国のフィリピン、ベトナムの領海に入り込み、石油資源の強奪を実行いたしております。このどちらもアメリカとは同盟関係を結んでいない。したがって中国のやりたい放題。東シナ海では、日本の尖閣諸島が狙われております。先ほどの小笠原諸島の珊瑚強奪漁船の襲来みたいなものがこの地区にいつ現れるかわからない。すでに過去に何回も実績を上げているうえ、随時、中国の軍艦が日本領海内を回遊している。空でも軍用機がしばしば日本領空を冒して挑発している。こんなことが許されるのか?これは、核を持つ優越感からかと推察される。尖閣を守るのは日本領土であるので憲法9条にも抵触しない。自衛戦であると言ってみても対抗のしようがない。

結論に入ろう。ギリシャのアクロポリスの例のごとく、自国を守るのに単独で守れない小国は必ず集団化するよりない。それに伴う権利義務は逃れられないという神聖な事実を「スリーハンドレット」という映画は教えているのです。そういう意味で安倍首相の主張と決断は一国民として賛同せざるをえない。そして今回の選挙結果、日本国民はつらいが賢い選択をしたと言えましょう。以上


35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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