秤屋会長のひと言

ヒット商品の作り方・・・テレビ連続小説を見て vol.7

後だしのY方式がなぜ優れているのかについては、説明によれば、機械システムは極めてコンパクトに出来上がっていることに尽きるという。X方式で作ると、非常に規模が大きくなる。イメージ的には、アポロ月着陸船のように背が高くまた下辺の支えも頑丈になる。およその高さは2階までぶち抜きで作らなければならない。ところがY方式によれば、半分以下の高さで横の展開もさほど苦にならない。というところから、容積的には半減以下。


前回説明しました酵母菌の保護に関して言えば、機械システムがコンパクトであるほど、清掃が行き届き雑菌の繁殖を防ぐことができる。X方式での欠点は、清掃に時間がかかることである。ここでいう清掃は半端じゃありません。社員数名が総掛かりで数時間かかるという。アルコール消毒は機械の隅々まで徹底して毎日の課業となっておるそうです。そういう観点からするとこのY方式による機械の清掃時間は少人数で1~2時間でできてしまう。そうすれば2割高いぐらいは問題にならないというところらしい。「機械本体だけの評価ではY方式は却下になりますが、付帯条件が付けば問題にならない。」という事がわかり、弊社と関係するAプラントメーカーさんはお互いににんまりということになりました。この後価格のネゴはなく受注。特許もすぐさま申請手続きと運びました。これでライバル社の特許とは無関係で、しかもより優れた方式でカウンターパンチを繰り出すことができることになりました。


この後日談


次の受注先は長野の伝統あるみそ製造の会社でした。我々は、南九州の納入時とは違い、何の気兼ねもなく受注して納入いたしました。ここもライバル会社のお得意様でした。そこで、このライバル会社の技術担当者がわが社の納入後、特許侵害がないか視察に来たらしいのですが、曰く「理解できないシステムだ」と言って首をかしげながら帰って行ったそうです。


こうして、技術競争で負けるということの痛烈な結果を経験したわけですが、立場代わりこれがわが社に起きたらどうなるか考えただけでも恐怖です。


満腹ラーメンさんの場合は、まったく無の市場に、自社独自の開発品を投入しての新市場を成立させての成功で、競合関係はありません。わが社の場合は既存の市場で、二強によるせめぎ合いの中に割って入って、相手をノックアウトしてしまったということになります。
ここで教訓を得るとすれば「これは…。」と思った最上の条件について、簡単には譲歩はしないという姿勢がいかに大切なのかということ。即席ラーメンの後のカップラーメンの開発でもいかんなく発揮され年間何十億食という需要が発生、一大産業に成長することになった。


この味噌原料混合装置では、自社技術ではできないとしてもあきらめず、5社目のわが社で思う結果を得たとするこの執念では負けず劣らずでしょうか?ともあれこれでだけとは言えないにしても、このプラントメーカーA社は業界に確固たる地位を占めることになりました。自社技術では駄目としても世間に広く求めれば必ず道は開けるというビジネス上のノウハウを、わが社も身に着けることができた言うことになります。




35年生まれの戦前派。早稲田大学政経学部で経済学を専攻。

略歴
60年中日新聞社入社。
67年(株)守隨本社入社。三県下に限られていた販域を全国区へ展開
74年同社常務就任:機械式はかりから電子式はかりへの転換にいち早く取り組み、成功。新製品を次々と発表。次いで85年よりプラザ合意後の円高を利用し、海外との交流を開始。海外優秀製品を日本市場へインプットし、吊り秤市場ではTOPのシェアを掌握した。
90年同社社長就任
以後、移動式計量機で産業界の物流システムに貢献した。
2016年代表取締役会長に就任
2021年代表取締役会長を退任

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